飲食店を成功させるためには、美味しい料理や高品質なサービスを提供するだけではなく、効果的なマーケティング戦略を立案することが不可欠です。ここでは、飲食店が成功するためのマーケティング戦略と、具体的な実践方法をご紹介します。
目次
そもそもマーケティングとは?
マーケティングとは、企業や店舗が顧客のニーズを満たすために商品やサービスを提供して自社・自店舗の利益に繋げる、一連の活動のことを言います。このマーケティング活動を具体的に計画し実行することをマーケティング戦略と言い、効率的に利益を生むためには重要な要素です。
飲食店にマーケティング戦略が必要な理由
現代においては飲食店にもマーケティング戦略は必須です。その理由についてご説明します。競争の激化
飲食業界は参入衝撃が比較的低いこともあり、競争が激化しやすい業界です。コロナの影響もありWeb注文やデリバリーサービスなどが増加し、外食の選択肢は以前より拡大しています。そのためマーケティング戦略を通じて競合店との差別化やブランドイメージの強化を図り、独自性を打ち出すことが重要です。
顧客の獲得
売上げを伸ばすためには自店舗の魅力を効果的に伝える必要があり、そのためにはマーケティング戦略が必要です。時代の流れとともに顧客ニーズは多様化し、味覚の嗜好だけではなく、ビーガンやサステナビリティなどの社会的価値観を飲食店に求める顧客もいます。細分化された顧客ニーズのどこに対応するかを考える上で、マーケティング戦略は重要要です。
顧客ロイヤリティの向上
顧客ロイヤリティとは、顧客が特定の店舗や企業を継続的に支持し繰り返し利用することです。顧客が自店舗を一番に選ぶ存在になるためには競合店との差別化を図り、顧客ロイヤリティを向上させる必要があります。顧客ロイヤリティを向上させる施策は複数ありますが、自店舗に最適な手法を選択するためにもマーケティングの側面から考えることが重要です。その結果リピーターが増加し、売上げが上がりやすくなります。
情報収集の多様化
これまで、集客効果を上げるにはグルメサイトに掲載することが最善とされていましたが、近年ではSNSや口コミサイトの普及などにより、顧客が飲食店の情報を得る選択肢が拡大しています。グルメサイトには掲載せず、独自のキャンペーンやSNSを利用したリピーター施策などを行い、安定的な集客を行っている飲食店も数多くあります。どの媒体を利用すると集客効果を最大できるかを考える上で、マーケティング戦略を策定することは重要です。
マーケティングの基礎知識
具体的なマーケティング戦略の前に、マーケティングに関する基礎知識をご紹介します。
マーケティングミックス
マーケティングミックスとは、商品やサービスを市場に送り出し、消費者に届けるための4つのP、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販売促進)を組み合わせて戦略を立てることを指します。
Product(製品)
商品の特徴、品質、デザイン、ブランドイメージなど、消費者に提供する製品そのものを指します。飲食店では、メニューの構成、食材の品質、盛り付け方などがこれに当たります。
Price(価格)
商品やサービスの価格設定のことです。原価、競合店の価格、ターゲット顧客の所得などを考慮して価格を決めます。
Place(流通)
商品を消費者に届けるための流通経路のことです。飲食店では、店舗の立地、デリバリーサービスの利用などがこれに当たります。
Promotion(販売促進)
商品やサービスを消費者に知ってもらい、購入してもらうための活動です。広告、PR、キャンペーン、イベントなどがこれに当たります。
マーケティングサイクル
マーケティングサイクルとは、マーケティング活動が繰り返す一連の活動のことです。5つの要素に分解でき、飲食店においては集客から顧客との関係構築、そしてリピートに繋げるためのプロセスを提示しています。
市場調査とターゲット設定
客層や顧客のニーズ、周辺環境、競合店などを調査し、自店舗の強みを明確にします。その後、年齢層や性別、趣味、来店頻度など、具体的なターゲット像を定義します。
戦略立案
設定したターゲットに対してどのような価値を提供するのか、競合店との差別化を考慮して考えます。次にマーケティングミックスを策定します。商品(メニュー)やサービス、価格、流通、プロモーションの4つの要素を組み合わせ、戦略を立案します。
実行
立案した戦略に基づいて、実際にマーケティング活動を実行します。SNSやチラシ、クーポンキャンペーン、イベント実施など、様々な手法を利用して顧客へアプローチを行います。また、店内環境やデザイン、接客サービスなどについても策定し、顧客満足度を向上させるための施策を実施します。
評価
実行したマーケティング活動の効果測定を行います。売上推移や客単価、客数などを分析し、施策の有効性を測定します。また、アンケートや口コミサイト、SNSなどの顧客からのフィードバックを収集し、課題や改善点を抽出します。
改善
評価に基づき、施策の見直しや戦略の修正、新たな戦略立案を行います。効果が得られなかった施策は停止し、効果があった施策に絞り強化を図ると効率的です。
マーケティングサイクルは、PDCAサイクルを繰り返し行うことでマーケティング活動の改善を継続的に行うことができます
ここからは飲食店のマーケティング戦略の立て方・進め方を、流れに沿ってより具体的に解説していきます。
市場調査とターゲティング
飲食店のマーケティングを実施する際、まず考えることになるのがターゲティング設定です。「誰に何を提供したいのか」を徹底的に考えることで集客力がある店舗作りが可能です。
ターゲット市場のセグメンテーション
飲食店のターゲット市場をセグメンテーション(細分化)することは、より効果的なマーケティング戦略を立てる上で非常に重要です。飲食店のセグメンテーションは、以下の軸を組み合わせることでより詳細なターゲット層を決めることができます。
人口統計学的
年齢、性別、職業、収入、学歴、家族構成など
地理的
国籍、地域、都市部・郊外、店からの距離など
心理的
ライフスタイル、価値観、趣味、個性、ペルソナなど
行動学的
購入頻度、購入金額、利用シーン、ブランドロイヤルティなど
顧客ペルソナの作成
顧客ペルソナとは、自店舗の商品やサービスの顧客像を具体的にイメージして設定した架空の顧客像のことです。ペルソナを設定することでターゲット像が明確になり、より効果的なマーケメーリング戦略を立てることが可能です。顧客のニーズを整理して理解するためにも、顧客ペルソナを設定することをおすすめします。
具体的な顧客ペルソナの作成やペルソナシートのダウンロードは下記記事をご確認ください。
自店舗分析と競合分析のポイント
ペルソナ設定などを通してターゲットが明確になった後は、自店舗と競合店舗を分析して提供する価値を決めていきます。
自店舗分析
自店舗の現状を客観的に把握し、今後のマーケティング戦略を立てるためには自店舗分析は不可欠です。メニュー別の売上数、利益率、客数や客単価などの売り上げ分析、顧客属性の集計、アンケート調査などによる顧客分析、従業員へのヒアリング調査などを通し、自店舗の強みや課題点などを明らかにし、どのような価値を提供していくのかを考えていきましょう。
競合分析
競合分析を行うにあたり、まずは分析するための情報を集めることから始めましょう。売上や利益率など公開されていないデータは利用できないため、立地や顧客層、メニュー数やメニュー単価、席数や集客方法など、調査によって分かる情報を集めます。その後、情報をもとに競合店の強みや課題点を明らかにし、市場の動向などを踏まえた上で自店舗の展開を考えます。
自店舗分析、競合分析ともにSWOT分析、クロスSWOT分析のフレームワークを利用することで強みや課題点を抽出しやすくなり、そこから戦略を考えやすくなります。
【無料ダウンロード】飲食店向けマーケティングフレームワーク
ここまで紹介した分析方法やマーケティングサイクルは、フレームワークを利用することで効率的に課題点の抽出や戦略立案を行うことができます。下記から、飲食店経営者向けにカスタマイズしたマーケティングフレームワーク集をDLいただけます。店舗のマーケティング活動に是非役立ててください。
プロモーション戦略
ターゲット設定が完了し、提供する商品やサービスが決定したら集客方法について考えていきます。
飲食店のプロモーション戦略は、グルメサイトへの掲載や広告出稿だけではなく、顧客との関係性を築き店舗の魅力を伝えるための総合的な活動を指します。様々なアプローチ方法がありますが、自店舗の特色や状況に合わせて最適なプロモーション戦略を立てていくことが重要です。
割引クーポンやキャンペーンの展開
新規顧客の獲得やリピーターの促進を目的としたクーポンやキャンペーンを実施します。ポイントカード制の導入や紹介制度の実施、LINE公式アカウントを利用したクーポン配布などを行うことで、集客数を増加させる効果が期待できます。
具体的な集客施策については下記記事をご参考ください。
イベントやコラボ企画の実施
顧客に特別な体験や思い出を提供し、顧客とのコミュニケーションを強化する上でイベントやコラボ企画は有効なプロモーション施策です。
店内イベント
季節や店舗の周年記念など様々なテーマで実施されています。以下、一例です。
- ハロウィンパーティー
- クリスマスディナー
- アコースティックライブ
- 料理教室
- ハンドメイドイベント
- 親子で楽しめるイベント
コラボ企画
コラボ企画は、地元の企業や店舗、ブランドやアーティストなど異業種と共同で企画するイベントです。
- キャラクターとのコラボメニュー
- 地元の生産者とのコラボメニュー
- ファッションブランドとのコラボイベント
- 他の飲食店との合同イベント
このような施策は、店舗の認知度を向上させたり、顧客層の幅を広げるためにも有効です。また、イベントによっては地域の活性化に貢献することになるので、地域密着型の店舗として認識され露出が増えたり、新しい顧客の発掘もしやすくなります。
デジタルマーケティングの活用
飲食店集客において、SNS運用や対策などのデジタルマーケティングの領域を対策することは必須事項と言えます。ここでは、具体的な対策方法について紹介します。是非参考にしてみてください。
SNSの選び方と戦略
当社が実施したアンケート調査によると、飲食店を選ぶ際にInstagramやTiKTokなどのSNSを活用すると答えた人は全体の20%にのぼりました。
n=1,913 複数選択
客層にもよりますが、現代において飲食店の集客においてはSNSの活用は不可欠と言えます。 また、各SNSはターゲットや特徴がそれぞれ異なります。SNSを選ぶポイントは、大きく分けて以下の2つが挙げられます。
飲食店選びで利用する媒体についての調査結果は下記記事をご覧ください。
ターゲット顧客層の分析
年齢層や性別、何に興味を持っているのか、どのようなSNSを利用するかなど、メインターゲットとしている顧客に対し、どのSNSを利用すれば集客効果が最大化できるかを考えて選びます。
例えば、メインターゲットが若い女性の場合はInstagramやTikTok、ファミリー層にはFacebookやLINE、ビジネスパーソンにはX、などターゲット層が最も接するSNSが何かを考えます。
店舗コンセプトとの整合性
店舗の雰囲気や提供する料理、出店地域を加味して利用するSNSを選びます。例えば、お洒落な雰囲気で写真映えするメニューが売りの店舗であればInstagramでそれが伝わる画像を投稿する、地域密着型の居酒屋であればFacebookで地域情報を発信するなど、店舗コンセプトに合わせて選択する方法もあります。
各SNSの特徴
SNS | 特徴 | 活用方法 |
---|---|---|
画像・動画重視、視覚的な訴求力が高い。 | 料理写真、店内の雰囲気、イベントの様子などを投稿 | |
幅広い年齢層に利用されている、コミュニティ形成 | クーポン配布、イベント告知、顧客とのコミュニケーション | |
X(旧Twitter) | 情報拡散力が高い、リアルタイムなコミュニケーション | 新メニューの告知、キャンペーン情報、顧客からの質問への回答 |
TikTok | 短尺動画、若年層に人気 | 料理動画、店舗紹介動画、トレンドを取り入れたコンテンツ |
SNSはひとつに絞る必要はありません。複数のSNSを運用することでより多くの顧客にアプローチをすることが可能です。ただし、営業時間やメニュー内容などがSNSによって内容違う、となってしまうと顧客の混乱を招き集客にも影響を及ぼす恐れがあるため、管理可能な範囲で運用するようにしましょう。
Webサイトの活用とSEO対策
飲食店経営において、公式サイトを作成してSEO対策を行うことも集客に繋がる重要な要素です。狙ったキーワードが検索エンジンで上位表示されることで、自店舗を知らない人にも発見されやすくなり新規顧客の獲得に繋がります。
自店舗の強みや競合店との差別化ポイントをしっかり提示することができ、広告費用も発生しないため上手く活用できればコストパフォーマンスが高い集客施策となります。
飲食店SEOにおける対策キーワード選定のポイント
最も多いのは、「地域名+業種」のキーワードで対策しているパターンです。例えば「渋谷 カフェ」などと検索すると、渋谷にあるカフェが表示されます。
効率的に集客する場合、さらにキーワードを絞って対策することがお勧めです。渋谷にあるカフェであれば「渋谷 道玄坂 カフェ」と地域をさらに絞ったり、「渋谷 オープンカフェ」「渋谷 カフェ ペット歓迎」など店舗の特色を入れることで上位表示もされやすくなります。
飲食店SEOの注意点
SEOは継続的な取り組みが必要な施策であり、広告のように短期間での成果を期待できるものではありません。順位をモニタリングしながらPDCAを回していく必要があります。SEO対策は、そのような体制を整えられる飲食店にはおすすめの施策です。
MEO対策の実施
MEO(Map Engine Optimization)とは、Googleマップなどの地図検索で自店舗が上位表示されるように最適化する対策のことです。Googleマップで上位表示されることで、より多くの顧客から店舗を発見されやすくなります。
MEO対策の具体的な方法
①Googleビジネスプロフィールの登録と最適化
MEO対策を実施するには、Googleビジネスプロフィールの登録は必須です。店舗情報や店舗画像を設定し、常に最新の情報に更新しておくようにしましょう。また、投稿された口コミもチェックし、返信を行うことも重要です。
②対策キーワードの最適化
SEO対策と同様、対策キーワードを設定することは重要です。「地域名+業種」や「知地域名+特徴(子連れ歓迎、個室ありなど)」などの対策キーワードを店舗情報に記載することで、上位表示が狙いやすくなります。
③高品質な口コミの獲得
顧客からの口コミの数や評価内容もMEO対策する上で重要な指標です。常連の顧客に口コミ投稿を依頼する、口コミ投稿を促すキャンペーンを店内で行うなどして、高品質な口コミを積極的に集めるようにしましょう。
さいごに
飲食店にマーケティング戦略が必要な理由、その具体的な手法についてご紹介しました。飲食店におけるマーケティング戦略は、「誰に」「どのような価値を」「どうやって」伝えるのか、ということを徹底的に考えることが重要です。
マーケティング戦略は、フレームワークを利用することで課題の抽出から現状把握、施策案までを順序立てて立案することができます。飲食店に特化したマーケティングフレームワークは下記から無料ダウンローできます。是非自店舗の集客に役立ててください。