飲食店コンセプトの作り方と成功事例10選|失敗しないための「5W2H」設計図

飲食店コンセプトの作り方と成功事例10選|失敗しないための「5W2H」設計図

近年の食材費高騰や人手不足など、様々な課題に直面している飲食店も多いのではないでしょうか。そんなときに、独自コンセプトを設定しぶれない経営軸を持つことは非常に重要です。本記事では、失敗しないための「5W2H」設計図やペルソナ設定のコツ、成功事例10選を解説します。

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飲食店にコンセプトが重要な理由

自分のお店が「どんなコンセプトか」を明確に言語化できているオーナーは意外と少ないものです。しかし、飲食店経営においてコンセプトは全体の指針となる重要なものです。なぜコンセプトがこれほどまでに重要なのか、3つのポイントに分けて解説します。

経営のブレない軸となる

飲食店を運営していると「新メニューに流行りのスイーツを入れるべきか?」「内装を少し派手にするべきか?」など、日々さまざまな迷いが生じます。

コンセプトが固まっていないと、その時々の流行や目先の売上に振り回され、店の一貫性が失われてしまいます。一貫性のない店は、お客様に「結局、何のお店なの?」という違和感を与え、信頼を損なう原因になります。

コンセプトという「軸」があれば、メニュー開発から接客スタイル、BGMの一曲に至るまで、全ての判断基準が明確になります。「それはコンセプトに合っているか?」と自問自答することで、ブランドの純度を高め続けることができるのです。

集客の武器となる

現代は、美味しい料理を提供するだけではお客様が来てくれない「超・飽和時代」です。お客様が店を選ぶ理由は「美味しいから」だけではなく、「自分のニーズ(目的)に合っているから」へと変化しています。コンセプトは、お客様のニーズにどう答えるかを伝えるものとしても重要な役割を果たします。


「仕事帰りに1人で静かにワインを楽しみたい」

「おしゃれな内装・おしゃれな音楽で1日の疲れを癒したい」

「実家のような安心感の中で家庭料理を楽しみたい」

「子供連れでも周囲を気にせず本格イタリアンを食べたい」


このようにターゲットを絞り込んだコンセプトは、その悩みや欲求を持つ層にとっての「選ぶ理由」となります。「誰にでも好かれようとする店」は誰の目にも留まりませんが、「尖ったコンセプトを持つ店」は、ターゲットの心に深く刺さり、強力な集客力を生むこともあります。

生存率の向上に繋がる

飲食業界の厳しさは、数字にも顕著に表れています。帝国データバンクの調査によると、2025年の飲食店倒産件数は900件に達し、過去最多を更新しました。食材・光熱費の高騰や賃上げによるコスト増、そして激化する競合環境により、3年連続で増加という極めて厳しい局面を迎えています。

「飲食店」の倒産動向(2025年) 引用元:「飲食店」の倒産動向(2025年)|株式会社 帝国データバンク

「3年以内に約7割の店が姿を消す」とも言われるこの業界を生き抜くためには、「選択と集中」が不可欠です。コンセプトが明確であれば、どこにお金をかけ、どこを削るべきかが明確になります。


・こだわりの食材には投資し、内装はDIYでコストを抑える

・店内の雰囲気作りを重視し、お酒メインでフードは軽食のみにする

・回転率を重視し、過剰なおもてなしを省いて効率化を図る

・接客を重視し、人件費に最もコストをかける


このようにコンセプトに基づいた戦略的な運営ができる飲食店こそが、コスト増の波を乗り越え、長期的な生存率を高めることができるのです。

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コンセプト設計に欠かせない「5W2H」のフレームワーク

コンセプトを「なんとなく」で決めるのは危険です。頭の中にあるイメージを具体化し、収益化可能なビジネスモデルに落とし込むために最適なツールが「5W2H」というフレームワークです。

5W2Hとは

5W2Hとは、「いつ・どこで・だれに・何を・なぜ・どのように・いくらで」を整理し考えるためのフレームワークです。これを飲食店経営に当てはめることで、理想と現実のギャップを埋め、失敗の確率を最小限に抑えることができます。

When(いつ): 利用シーンと時間軸

単なる営業時間だけでなく、「お客様がどのような時(シーン)に利用するか」を定義します。

  • 朝食、ランチ、カフェタイム、ディナー、深夜
  • 日常使い(デイリー)なのか、記念日(ハレの日)なのか
  • 来店頻度は週1回か、月1回か

これによって、メニュー構成や必要なスタッフ数が決まります。

Where(どこで): 立地と物件の雰囲気

ターゲットが集まる場所、そしてコンセプトを表現する空間を選びます。

  • 駅近の繁華街、ロードサイド、閑静な住宅街
  • 空中階(2階以上)や地下、あるいは隠れ家的な路地裏
  • 内装の雰囲気(モダン、レトロ、インダストリアルなど)や坪数 

立地は後から変更できないため、5W2Hの中でも特に慎重な検討が必要です。

Who(だれに): ターゲットの明確化

「老若男女すべて」は、結局誰にも刺さりません。

  • 性別、年齢、職業、居住地、家族構成
  • 価値観や悩み(例:短時間で安く済ませたい、ゆっくり会話を楽しみたい)

「その人は、なぜわざわざ自店に来るのか」というペルソナ(顧客像)を具体的に描き出します。

What(何を): 提供価値とメニュー

提供するのは、料理という「モノ」だけではありません。

  • 看板メニュー(キラーコンテンツ)は何か
  • どのような体験(ワクワク感、癒やし、驚き)を提供するのか
  • 競合他社にはない「独自の売り」は何か

料理だけではない、体験を含めて何を提供するか考えます。

Why(なぜ): 創業の動機・存在意義

なぜ、その店をやるのか、明確にしましょう。

  • 解決したい地域の課題、届けたい想い
  • 他の誰でもない「あなた」がやる理由

これが明確であるほど、共感したスタッフやファン(リピーター)が集まりやすくなります。

HowMuch(いくらで): 価格帯と収益構造

客単価の設定と、それを支える原価率・利益率の設計です。

  • 想定客単価(ランチ1,200円、ディナー5,000円など)
  • 看板メニューの原価は高く、ドリンクの原価は低くといったバランス
  • 損益分岐点をどこに置くか

損益分岐点が曖昧だと、忙しい割に利益が出ない「貧乏暇なし」の状態に陥ってしまうので注意しましょう。

【資料DL】コンセプト設計に便利なフレームワークテンプレート

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5W2Hを始め、コンセプト設計を行う際に使えるフレームワークテンプレートを無料でダウンロードいただけます。是非お役立てください。

ターゲットを明確にする「ペルソナ設定」のコツ

5W2Hで大まかなターゲットを決めただけでは、お客様の心に刺さるサービスを作るには不十分です。そこで必要になるのが、ターゲットをさらに具体化した「ペルソナ設定」です。

ペルソナとは

ペルソナとは、自店の理想的な顧客像をあたかも実在するひとりの人間かのように詳細に定義したものです。

単なる「ターゲット層」ではなく、その人の名前、年齢、住まい、性格、趣味、そして「日々の悩みやライフスタイル」まで深く設定します。ペルソナを1人設定することで、「この人ならこのメニューを喜んでくれるだろうか?」「このBGMを心地よいと感じるだろうか?」という判断が明確になり、店作りの細部に一貫性が生まれます。

ペルソナ設計の詳しい情報は下記記事からご確認いただけます。

ペルソナ設定の手順

以下の3ステップで、架空の「最高のお客様」を作り上げていきます。

1. 基本プロフィールの設定

まずは、その人の外見や環境を具体化します。

  • 基本情報: 氏名(仮名)、年齢、性別、居住地(〇〇駅周辺など)
  • 職業・経済状況: 役職、年収、お小遣い、勤務地
  • 家族構成: 独身、既婚、子供の有無、ペットの有無

2. ライフスタイルと価値観の深掘り

その人が「どのような日常を送り、何を大切にしているか」を考えます。

  • 趣味・特技: 休日の過ごし方、よく使うSNS(InstagramかXか等)
  • 食へのこだわり: 質より量か、健康志向か、トレンド好きか
  • 外食の動機: ストレス解消、自分へのご褒美、効率的な栄養補給
  • よく読む雑誌やサイト: どのような言葉遣いに親近感を覚えるか

3. 「不満」や「悩み」の書き出し(インサイトの発見)

ここが最も重要です。その人が現状、飲食店に対して感じている「小さな不満」や「未充足の悩み」を探ります。

  • 「仕事帰りに一杯飲みたいが、騒がしい居酒屋は疲れる」
  • 「子供を連れて外食したいが、周りの目が気になって味がしない」
  • 「ダイエット中だが、たまにはお腹いっぱい美味しいものを食べたい」

この「不満」や「悩み」を解消することこそが、店舗のコンセプト(=価値)になります。

【資料DL】ペルソナ設計シート

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飲食店向けのペルソナシートを無料でダウンロードいただけます。こちらを活用し、店舗の運営に役立てていただければと思います。

【業態別】飲食店のコンセプト成功例10選

各業態で「コンセプトが突き抜けている」成功事例を厳選しました。それぞれの店舗が5W2Hやペルソナに対してどのような「答え」を出しているかに注目して紹介します。

居酒屋

塚田農場(産直×エンタメ接客)


https://www.tsukadanojo.jp/

「生産者と消費者を繋ぐ」というWhy(目的)を徹底。スタッフが「ジャガイモの作り手」のストーリーを語り、リピートするごとに役職が上がる「名刺システム」を導入。単なる飲食を、生産者を応援する体験へと昇華させました。

新時代(圧倒的コスパ×看板商品)

新時代
https://www.phads.jp/shinjidai.html

「伝串(鶏皮串)」という唯一無二のキラーコンテンツに特化。1本50円という衝撃の価格設定と、ピラミッド状に積まれた視覚的なインパクトで、「安く、楽しく、お腹いっぱいになりたい」という若者からサラリーマンまでの心を掴んでいます。

レストラン

俺のイタリアン(立食×高級食材×低価格)

俺のイタリアン
https://www.oreno.co.jp/restaurants/italian

「高級食材を一流シェフが調理し、低価格で提供する」というWhatとHow Muchの常識を覆したモデル。かつては「立食」にすることで回転率を極限まで高め、原価率60%超でも利益が出る構造を確立しました。

叙々苑(焼肉×最高級サービス)

叙々苑
https://www.jojoen.co.jp/

「特別な日の食事」というWhen(シーン)を独占。食後のガムや布エプロンの提供、生演奏など、接待や記念日に失敗したくないというペルソナのニーズを完璧に満たす「おもてなし」をマニュアル化し、ブランドを不動のものにしました。

カフェ

ブルーボトルコーヒー(サードウェーブ×体験価値)

ブルーボトルコーヒー
https://store.bluebottlecoffee.jp/

「個人の家にお客様を招くようなホスピタリティ」がコンセプト。あえて利便性の高い駅ナカではなく、少し離れた立地(Where)に開放感のある店舗を構え、1杯ずつ丁寧に淹れる「時間の贅沢」を売っています。

スターバックス コーヒー(サードプレイス)

スタバ
https://www.starbucks.co.jp/

家でも職場でもない「第3の場所」を提供。徹底したスタッフ教育により、どこでも変わらない居心地の良さを実現。ペルソナが「1人で読書をしたい時」も「友人と語りたい時」も、安心して選べる空間作りが成功の鍵です。

オンライン・テイクアウト

究極のブロッコリーと鶏胸肉(超特化×ストイック)

QBT
https://qbt-jp.com/

メニューは「ブロッコリーと鶏胸肉」のみという、Whatを究極まで絞り込んだ事例。「ボディメイク中の食事が面倒」という特定のペルソナに対し、迷わせない選択肢を提供することで、デリバリー市場で圧倒的な支持を得ました。

スープストックトーキョー(スープ×女性の自立)

スープストック
https://www.soup-stock-tokyo.com/

「世の中の体温をあげる」というWhyを掲げ、働く女性が1人でも入りやすいファストフードとして確立。化学調味料を使わない安心感と、季節感のあるメニュー展開で、テイクアウト需要も非常に高いモデルです。

その他

一蘭(味集中カウンター)

一蘭
https://ichiran.com/

「ラーメンの味を深く味わってほしい」というWhyから、隣と遮断された「味集中カウンター」を開発。女性1人でも人目を気にせず食べられるという副次的なニーズ(Who)も掘り起こし、独自のオペレーション(How)で世界展開に成功しています。

サイゼリヤ(圧倒的効率×日常食)

サイゼリヤ
https://www.saizeriya.co.jp/

「毎日の食事を豊かにする」というコンセプト。自社農場での栽培から調理の効率化まで徹底し、圧倒的な低価格を実現。特定の日だけでなく、「迷ったらサイゼリヤ」というお客様の日常に深く食い込むことに成功しています。

さいごに

失敗しないための「5W2H」設計図やペルソナ設定のコツ、成功事例10選を紹介しました。コンセプトは一度作って終わりではなく、トレンドやお客様のニーズに合わせて微調整を行っていくことが重要です。本記事でご紹介したフレームワークを活用いただき、今後の飲食店経営にお役立ていただければと思います。