飲食店がSNSを活用する上で、どのプラットフォームを選ぶかは非常に重要な決断です。それぞれのSNSには特徴があり、ターゲットとする顧客層や伝えたい情報によって最適なSNSは異なります。本記事では、各SNSの特徴やおすすめの運用方法について解説していきます。
目次
飲食店の集客にSNS活用が重要な理由
SNSは現代の飲食店において、非常に強力なマーケティングツールとして機能しています。その理由について解説します。
ユーザーの情報収集方法の変化
野村総合研究所の調査によると、インターネットによる情報収集で使用する情報源は、従来のGoogleやYahoo!などの検索エンジンに加え、SNSを利用した情報収集を行う人の割合が高まっているそうです。特に10代・20代の若年層にその傾向が強く、SNSは情報収集のメインツールとなりつつある、ということが伺えます。
画像引用:株式会社野村総合研究所
また、当社が飲食店選びに関する調査を実施したところ、「Instagram」や「X(旧Twitter)」「TikTok」を利用して飲食店選びをしている方が全体の20%にのぼりました。飲食店選びにSNSを利用している理由としては、「利用者の写真や動画やリアルな感想を知れる」「店内の雰囲気が分かりやすい」「普段からよくSNSを利用しているから」などの意見がありました。
SNSを利用して情報収集しているユーザーの増加が、飲食店選びで利用する媒体の変化にも影響していることがこの調査でも明らかになりました。
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コストを掛けずに広範囲にアプローチできる
SNSは、広告費を掛けずに多くの潜在顧客に情報を届けることが可能なツールです。また、地域の制限はなく全国に自店舗をアプローチすることが出来るため、上手く活用すれば近隣以外から集客することも可能です。最新の情報を発信したり魅力的なコンテンツを作ることで、自店舗の存在を広くアピールすることができます。
視覚的に訴求が可能
料理や店内の写真、動画などをSNSにアップすることで、自店舗の雰囲気を視覚的に伝えることができます。季節メニューや新しい設備、イベントの紹介などをアップすることで、顧客の来店意欲を高める効果が期待できます。
顧客とコミュニケーションが築ける
SNSのコメントやメッセージ機能を通して、顧客とのコミュニケーションを直接とることができます。店舗を利用した感想や意見などのフィードバックをリアルタイムで得ることができ、サービス向上に繋げることが可能です。また、顧客の店舗に対するコメントを他の潜在顧客が見ることができるため、来店促進効果も期待できます。
競合との差別化
自店舗の強みや個性をSNSで発信し続けることによって、近隣店舗や同ジャンルの店舗と比較した際のアピールポイントを潜在顧客に伝えることができます。SNS上で話題となったり、しっかり優位性をアピールすることができれば、新規顧客やリピート顧客の獲得に繋がります。
飲食店向けSNSの選び方
前段でSNSが飲食店の集客に重要なツールであることを解説しました。ここでは、自店舗はどのSNSを利用するべきなのか、その選び方について解説していきます。
各SNSの特徴
ここでは、各SNSの特徴を解説していきます。
Instagramは、、写真や動画をメインとした視覚的訴求力が非常に高いSNSです。料理写真や店内写真、イベントの様子などを伝えるには最適です。また、ユーザー層は10代~30代の若年層が多く、若年層をターゲットにしている飲食店にはより相性が良いSNSと言えます。
X(旧Twitter)
Xは、短文でのコミュニケーションがメインで、、リアルタイム性と情報拡散力が高いSNSです。投稿したポストに対して他のユーザーがコメントやリポストすることによって、情報が拡散していく仕組みです。また、トレンド機能によって今話題のトピックを知ることができ、そのトピックに合わせたポストを投稿することでより多くの人に見てもらえます。20代のユーザーが最も多いですが、その他多くの年代で利用されているSNSです。
Facebookは、ユーザーに30代~40代以上のビジネスパーソンが多いSNSです。拡散力はありませんが実名性が高く、その分信頼性が高いという特徴があります。また、炎上リスクも少なく、顧客とのコミュニケーションをとる上では最適なSNSと言えます。
LINE
LINEは、国内のメッセージ送信インフラとして確立されたツールで、SNSの中でも圧倒的な利用率を誇ります。店舗公式アカウントを作成し、顧客に友だち追加の促進をすることで、店舗の情報やクーポンを配信したり、顧客からのメッセージも受信できるため予約の受付をLINE上で行うことも可能になります。情報配信と1対1のコミュニケーションに特化したSNSなので、上手く活用すれば強力なマーケティングツールになります。
TikTok
TikTokは、短尺動画を作成し共有できるSNSとして若年層を中心に人気を集めています。TikTok内に膨大な数の楽曲が用意されているため、音楽に合わせてダンスをする動画が頻繁に拡散されています。店舗の紹介動画を作成したり、ハッシュタグチャレンジなど流行りの動画形式を取り入れることで、若年層を中心としたターゲット層へアプローチすることができます。
ターゲット顧客層に合わせたSNS選定のポイント
利用するSNSは、ターゲット顧客の年齢層や実施したい施策に合わせて選択することがおすすめです。比較表を作成したので、是非参考にしてください。
SNS | ユーザー数 | 主な機能 | 特徴 | ターゲット層 |
---|---|---|---|---|
6,600万 | 写真・動画共有、ハッシュタグ、ストーリー | 高画質な写真や動画で視覚的に訴求できる、トレンドに敏感な層にリーチしやすい | ファッション、美容、ライフスタイルに関心の高い層、10~30代女性がメイン | |
X(旧Twitter) | 6,700万 | 短文投稿、リアルタイム情報、ハッシュタグ | リアルタイムでの情報発信に強い、トレンドを発信しやすい | ニュースに関心の高い層、20代が最も多い |
2,600万 | 広範囲なつながり、グループ、イベント | 広範囲なユーザーにリーチできる、ターゲティング広告が充実している | 30代~40代以上のビジネスパーソン | |
LINE | 9,700万 | メッセージング、グループチャット、スタンプ | 日本国内で圧倒的なシェア、個人間コミュニケーションに強い | 全世代の幅広い層 |
TikTok | 2,700万 | 短尺動画、音楽、トレンド | 短時間で多くのユーザーにリーチできる、エンゲージメントが高い | 若年層、トレンドに敏感な層層 |
各SNSの強みを活かした運用方法
SNSごとに特徴や強みは異なります。それぞれのSNSの特性を理解し、効果的に活用することで、飲食店の集客やブランドイメージ向上に繋げることができます。ここでは、具体的な運用例をSNSごとに解説していきます。
Instagramは視覚的な訴求力が強いため、加工した写真や動画などで店舗の雰囲気やメニュー内容をアピールするには最適です。ハッシュタグを利用してより多くの潜在顧客へリーチを図ったり、ストーリー機能を有効に使うことで高い集客効果が期待できます。
<運用例>
・ メニュー写真を毎日投稿し、ビジュアルで食欲をそそる
・ 料理の作り方動画を投稿し、料理教室のようなコンテンツを提供
・ 店内装飾やイベントの様子をストーリーで発信し、リアルタイムな情報を共有
X(旧Twitter)
リアルタイムな情報発信が強みのX(旧Twitter)は、新メニューのリリースや営業時間変更、イベント告知などタイムリーな情報発信に適しています。顧客からのコメントに対応することで、関係性構築にも役立ちます。ハッシュタグを活用し、トレンドに敏感な層にもアプローチできます。
<運用例>
・ ランチメニューを毎日更新
・ 期間限定メニューの告知
・ 顧客からの質問に丁寧に対応
・ フードデリバリーサービスとの連携
Facebookは、30代~40代以上のビジネスパーソンや年配層のユーザーにリーチするには最適なSNSです。実名制が高いため、Facebook内に店舗ページを作り運用することで、ファンコミュニティを形成することも可能です。
<運用例>
・ 店舗のイベントやキャンペーン情報を発信
・ 顧客の声を紹介し、共感を呼ぶ
・ グループで顧客と交流し、意見交換を行う
LINE公式アカウント
1対1のコミュニケーションに特化しているLINEは、1人ひとりにクーポン配布や予約受付などの対応が可能です。友だち登録に特典を用意することで顧客の囲い込みができ、安定したリピーター集客効果も期待ができます。
<運用例>
・ 友だち追加特典として、ドリンクサービスを提供
・ 誕生日のクーポンを配信
・ LINE限定メニューの販売
・ 予約の受付
TikTok
10代~20代のユーザーが多いTikTokは、トレンドに敏感な若年層にアプローチすることが可能です。人気の楽曲を活用した動画を作成し公開することで、より多くの潜在顧客にリーチすることができます。
<コンテンツ例>
・ 料理の作り方動画
・ 店舗紹介動画
・ スタッフ紹介動画
・ ハッシュタグチャレンジ
SNSの特徴を理解し用途ごとに使い分けよう
SNSは1つだけを集中して運用するよりも、それぞれのSNSを用途ごとに組み合わせて運用することで、より高い集客効果が期待できます。例えば、視覚的な訴求効果が高いInstagramで店舗の雰囲気を伝え、TikTokで料理の作り方動画を投稿し、X(旧Twitter)で最新情報を発信する、など複数のSNSを連携させることで、より多くの顧客にアプローチできます。
5つのステップで成功するSNS運用計画
現代において、飲食店がSNSを活用して集客やブランディングを行うことは非常に重要です。しかし、単にSNSを開設するだけでは効果は期待できません。成功するためには、計画的な運用が不可欠です。
①目標設定
定量的な目標
フォロワー数やエンゲージメント率(いいね!、コメント、シェア数)、Webサイトへの誘導数など、数値で表せる具体的な目標を設定します。
定性的な目標
ブランドイメージの向上や顧客との関係強化、新規顧客獲得など、数字で示せない目標を具体的にします。
<具体例>
・ ブランドイメージを「おしゃれで居心地の良いカフェ」にする
・ 顧客との距離を縮め、リピーターを増やす
・ 近隣住民への認知度を上げる
②現状分析
まずは自店舗の特徴や強み、弱みなどを明確にします。メニュー内容やサービス面、雰囲気などいろいろな方向から自店舗を分析しましょう。
次に店舗の顧客やターゲット層について考えます。どのような人にアプローチしたいのか、年齢層や性別、仕事、興味関心などを具体的に定義していきます。ターゲット像の策定にはペルソナを活用する方法がおすすめです。
ペルソナシートを無料ダウンロードする③戦略立案
ターゲットが明確になったら、「どのSNSを利用してどのような発信をしていくのか」を具体的に決めていきます。設定した目標が店舗のブランドイメージ訴求なのか、顧客との関係性構築なのか、店舗名の認知度アップなのか。目的によっても選択するSNSや発信する内容は変わります。運用を始める前にしっかり考えましょう。各SNSの特徴や使い分けについては、前段でご紹介した表や運用例を参考にしてください。
④コンテンツ作成
利用するSNSが決まったら、コンテンツを作成していきます。SNSは継続的にコンテンツを配信していくことが重要なので、リソースや時間の面で無理なく続けられるかどうかなど、運用面も考慮して配信コンテンツを決めていきましょう。
⑤分析と改善
SNSは定期的に分析を行い、改善点を見つけて対応していくことが理想的です。最初に設定した目標設定を定期的に確認し、目標と現状とのギャップはどれくらいか、そのギャップを埋めるために何ができるかなど、立ち返って考えていくことが効果を出していくには重要です。
利用するSNSによって分析指標も変わりますが、フォロワー数、インプレッション数、エンゲージメント率、コンバージョン率などが代表的です。
飲食店がSNS運用をする際の注意点
ここまでは、飲食店がSNSを活用するメリットや具体的な運用ポイントについて解説してきました。ここでは、SNS運用において注意する点について解説します。是非参考にしてください。
炎上リスクへの対策
SNSは誰でも見られるオープンな環境のため、潜在顧客に広くリーチできるメリットがある一方で炎上するリスクとも常に隣り合わせです。また、SNSの投稿がきっかけで実際のクレームに繋がることがあります。
<SNSの投稿がクレームに繋がった例>
・ SNSに掲載した料理の写真と実際の料理の見た目に乖離があった
・ SNSに記載している営業日や営業時間が実際と違っていた
・ SNSで告知していたイベントの情報が誤っていた
SNSから生まれるクレームは「SNSに記載している情報が実際の姿とは違った」ということがきっかけであることが多いため、常に正しい情報を掲載することを意識しましょう。
スタッフの意識と教育
近年、飲食店のバイトスタッフが店内で非常識な行動をしている動画がSNSで拡散し大炎上する、という事例が相次ぎました。店舗のブランドイメージや集客にダイレクトなダメージとなるため、スタッフに対しSNSの利用規約やマナー研修を徹底し、不適切な投稿による炎上を未然に防ぎましょう。
法規制への対応
飲食店がSNSを運用する際に特に注意すべき法律は「景品表示法」です。
景品表示法
2023年10月より、ステルスマーケティング(ステマ)が景品表示法の禁止行為の対象となりました。ステマとは、広告とは気づかれないように消費者に宣伝することで、飲食店においては口コミ投稿キャンペーンが違反対象となることがあります。
キャンペーンは「口コミを投稿したらプレゼントをもらえる」という流れが一般的ですが、この仕組みは「プレゼントをもらうからには良い口コミを書かなければ」という心理が顧客側に働き、正直な感想を書きにくい状況になっている、という点がステマに該当すると判断されることがあるようです。
顧客に口コミを書いてもらいたい場合は、心理的なプレッシャーを作らず、正直な感想を書いてもらいやすい環境作りを意識することが重要です。
さいごに
飲食店向けにSNSの運用方法や各SNSの特徴について解説しました。SNSは上手く活用することが強力なマーケティングツールとなる一方で、炎上や法規制などのリスクも孕んでいます。運用する前に各SNSのガイドラインを確認し、禁止行為や控えるべき行為について確認するようにしましょう。複数人で運用する場合にはマニュアル化して共有することも重要です。